基礎教育系物理 松浦 執


研究テーマ: 糸状菌の菌糸体パターン成長による空間開拓戦略


 生命体は、栄養物を外界から取り込み老廃物を排出することで、体内に流れを作り積極的に体内を非平衡に保つシステムです。非線形非平衡な系では、多様なパターン形成が起きることが知られていますが、これが生命現象とどのように結びつき、どのように生きる状態を支えているのでしょうか。
 本研究室では糸状菌の一種であるコウジカビを対象にして、菌糸体コロニーの成長形態を研究しています。一般に生命体は体表を外界の栄養物にさらしてこれを吸収します。この様式には、微生物のように基質中に潜り込んで体表から物質を吸収排出する方法と、動物のように消化管などの体内体表を作り、その中に栄養物を通す方法とがあります。後者では、内部体表を複雑に入り組んだ構造にする(フラクタルデザイン原理)ことによって、より効率的に吸収排出しています。
 菌類の胞子は厳しい環境を耐えることができ、水や空気の流れなどに従って広範な時空間を旅することができます。胞子は、栄養のある条件の良い基質にたどり着くと早速菌糸を張り巡らして基質中に効率的な栄養吸収構造体を形成し、大量の胞子を再生産します。菌糸系は胞子ほどの耐性はなく、栄養が枯渇すれば溶けてしまったりもする一時的な器官ではありますが、基質の性質や他の微生物と関わり合いながら、不均質な基質を効率よく開拓する使命を担っています。
 菌糸系のパターンの作り方には、その菌の環境に対する関わり方が表現されているはずです。一方で、細く柔らかい体表を環境にさらしているために、菌の成長は環境の物理的条件(栄養物や阻害物質の拡散、温度、その他)の影響を直接に受けてしまいます。このように、菌糸の成長は、物理的条件に律される要素と、菌の積極的な成長戦略や統御の要素とが絡み合っているものと考えられるでしょう。


経歴

1988年 名古屋大学大学院理学研究科博士課程満了。
1990年 理学博士(名古屋大学)。
1991年 東海大学開発工学部助手。95年同講師。99年同助教授。


主要論文

S. Matsuura, Colony patterning and collective hyphal growth of filamentous fungi, Physica A, vol 315, no. 1-2, 125-136(2002).

S. Matsuura, Colony Patterning of Aspergillus oryzae on agar media, Mycoscience, vol. 39, no. 4, 379-390 (1998).

S. Matsuura and S. Miyazima, Colony Morphology of the Fungus Aspergillus oryzae, in Fractals in Biology and Medicine, eds T. F. Nonnenmacher, G. A. Losa, and E. R. Weibel (Birkhauser, Basel) (1993).

S. Matsuura and S. Miyazima, Colony of the Fungus Aspergillus oryzae and Self-Affine Fractal Geometry of Growth Fronts, Fractals, 1-1, 11 (1993).


3次元の基質中でのコロニー成長モデル(Java applet)
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リンク集

形の科学会(Society of Science on Form, Japan)

A Visual Notation for Rational Numbers Mod1  by Julie Tolmie


 

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