拡散霧箱


荷電粒子の飛跡を検出する測定器にWilsonの霧箱がある。特に、拡散霧箱といわれるものは簡単な工夫で制作することができる。

密閉した容器を用意しよう。その天井をヒーターで熱することができるようにする。そして、容器をドライアイスの上に置くなどして、容器の底は冷却しておく。

容器内の上部にエタノールなどの大気圧で蒸発し易い液体をためておく。すると、天井部が加熱されているので、アルコールは蒸発する。分子同士は互いに近づくと引力を及ぼし合って引き付け合う。しかし、加熱され、充分な運動のエネルギーを持ったアルコール蒸気の分子は、他の分子に近づいても、運動の勢いが大きいために、引力によって結合してしまうことは少ない。容器の天井付近で暖められた空気の分子も運動の勢いが大きくなっている。

天井付近から蒸発したアルコール分子は、あちこちと運動しながらやがて容器の底の方にも移動してくる。容器の底付近の空気の分子は、運動のエネルギーが小さく、運動の勢いが小さい。冷えた容器の底に衝突するときに、空気の分子は運動のエネルギーを奪われてしまう。同じようにアルコール蒸気の分子も、空気の分子との衝突などを通じて運動のエネルギーを奪われていく。このような時、気体の状態でバラバラに運動している分子同士が引力によってどんどん結合し、集合体となって霧の粒を形成しやすくなる。

実際、アルコール蒸気が容器中に広がると、元々空気中にあったチリを種にして細かい霧が発生する。やがて霧粒は重くなって底に落下してしまい、霧は薄くなっていく。

ここへ大きな運動エネルギーを持った荷電粒子が飛び込んできた(入射した)とする。入射粒子の電気的な力によって、周囲の分子・原子から電子がもぎ取られてしまう。このように、原子が、自由になった電子と電子を奪われた原子とに別れてしまうことを電離・イオン化と呼ぶ。このイオンは電気的な力で蒸気の分子とどんどん結合して、たちまち霧の粒に成長する。したがって、入射粒子の通った後には、イオンを種とした霧の粒が多数成長して、霧の筋が残るのだ。

容器に電場や磁場を掛けることにより、入射粒子の電荷量や運動量を測定することもできる。目にはとても見えないミクロな世界での出来事が、霧の発生という目に見える現象から明らかにできるのだ。


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