ドリフトのあるランダムウォーク


このアプレットは電気伝導そのもののシミュレーションではありません。即ち、電場の計算などはしていません。けれども、導体内の電気伝導を考える時に重要な、「ドリフト(漂流)」という考え方を視覚的に表わす目的で作ったものです。

このアプレットでは、粒子は正方格子上をランダムウォークしています。つまり、左右上下に等確率で1ステップづつ移動しています。右のスクロールバーを右方向に動かすと、このランダムウォークにドリフトがかかります。即ち、右に移動する確率を高くすることができます。スクロールバーを右にずらすにつれて、右方向に移動する確率が高くなり、全体が右へ右へと流れていくことが良く分かります。これがドリフトです。ドリフトの効果が低い時には、長い時間で見れば、全体がゆっくりと右へと流れます。

伝導電子(自由電子)を含む、規則的配列をした金属原子を考えよう。電子と原子の数はほぼ同じ。電子は導体中を自由に動き回れるだけの運動エネルギーをもっています。

電子は、規則的に配列した原子と頻繁に衝突し、散乱されます。従って、電子の運動はランダムな方向、速度で行われます。衝突してから、次に衝突するまでの間は、平均速度が106 m/s とかなりの高速です。衝突から衝突までの時間は 10-14 s くらいです。

電場がなければ、平均としてある方向に移動する電子の数と、反対方向に移動する数が同じで、電荷の正味の流れがありません。

しかし、電場がかかると、ランダムな熱運動に加えて、電場と反対方向への加速が生じます。電場は光速と同じ程度の速さ 108 m/s で導体内を伝わっていきます。伝導電子は電場が伝わってくると力を受けて加速されます。もしも、電源から非常に長い導線で回路がつながれていたとすると、電源に近い側から電子が加速されることになります。

伝導電子は、衝突から衝突までの間、電場と反対方向に力を受けるので、運動の軌跡も湾曲します。このようにして電場と反対方向に伝導電子の流れが生じます。この流れ”ドリフト”の速度は通常 10-4 m/s と非常にゆっくりしたものです。