電流と磁場

§1 目的

方形コイルに流れる電流の大きさ I と、電流が作る磁場の磁束密度 B との関係を測定する。さらに、磁束密度 B の大きさの空間分布を測定する。

§2 実験原理

電流はその周辺に磁場を作る。磁場の大きさを測定するために、本実験では,交流電流が作る磁場が電磁誘導を起こすことを利用して、誘導起電力の強さから磁場の強さを測定する。

方形コイルに交流電流 CRMG_1.GIF (311 バイト) を流すと、周波数 f で変化する磁場が形成される。この磁場の変動は次のように表わすことができる。

CRMG_2.GIF (321 バイト)

この磁場の中に、巻き数 n 、断面積 S のサーチコイルの断面を磁力線の向きに垂直に置けば、コイルに誘導起電力が生ずる。この起電力 V はレンツの法則を用いて以下のように計算することができる。

CRMG_3.GIF (1276 バイト)

これにより、サーチコイルの端子間に生ずる起電力の最大値 V0 を測定して、以下の式を用いて方形コイルの磁束密度の最大値 B0 を算出することができる。

CRMG_4.GIF (322 バイト)    (1)

§3 実験方法

磁場の発生源となる方形コイルは、直径 1 mm のホルマル線を一辺の長さ L = 50.0 cm の正方形に N = 50 回 巻いたものを用いる。これに f = 50 Hz (定数として扱う)の交流電流をスライダックで電流値を調節して I = 1.00 A から 5.00 A の範囲で流す。
磁場測定用のサーチコイルは、直径 0.1 mm のホルマル線を外径 r = 25.10 mm の円筒に n = 100 回 巻いたものを用い、その両端間誘導起電力を電子電圧計を用いて DV = 0.01 mV の感度で測定する。誘導起電力の測定値は実効値であるので、(1)式を用いて計算される磁束密度 B0 も実効値である。

この磁場測定用サーチコイルについて(1)式の分母を計算すると、次のように求められる。
2pfnS = 2pfnpr2 = 2p2fnr2 =
2 × 3.14162 × 50 Hz × 100 × ( 25.10 × 10-3 m )2 = □.□□ × 10 V・T-1

1. 磁場の強さと電流の大きさの関係
方形コイルの一辺の中心の位置を原点とし、辺と垂直方向の距離 R = 10.00, 20.00 cm にサーチコイルの円筒の中心点を固定する。方形コイルの電流値を I = 1.0 〜 5.0 A の範囲で変えながら、サーチコイルの誘導起電力 V を電子電圧計で測定し、(1)式に代入して磁束密度 B0 を求める。

2. 磁場の強さの空間分布
電流値を I = 2.00 A とする。サーチコイルの方形コイルからの距離 RR = 2.50 〜 40.00 cm の範囲で変えて、誘導起電力 V を電子電圧計で測定し、(1)式に代入して磁束密度 B0 を求める。

[ここに装置図と説明を挿入する]

§4 実験結果

1. 磁場の強さと電流の大きさの関係

コイル電流をかえたときの、各位置での起電力、起電力から(10)式を用いて求めた磁場の強さ(磁束密度)の測定値を表1にまとめた。さらに表1には、教科書p.159の正方形コイルによる磁場の理論式(10)をもとに計算した、各 IR および V での磁束密度の理論値を示して実験値と比較した。

コイル電流
I /A
R = 10.00 cm R = 20.00 cm
起電力
V /mV
磁束密度計測値
B /(10-4T)

磁束密度計算値
B /(10-4T)

起電力
V /mV
磁束密度計測値
B /(10-4T)
磁束密度計算値
B /(10-4T)
1.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□
2.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□
3.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□
4.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□
5.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□ □□.□□

表1.各コイル電流値と各位置における磁束密度の値

>手順:各コイル電流値での起電力の読み取り値を「起電力」の列に書く。(1)式を用いて磁束密度を計算し、磁束密度計測値の列に書く。さらに、教科書p.159の(10)式を用いて磁束密度を求めて磁束密度計算値の列に書く。この磁束密度計算値については、 http://nkiso.u-tokai.ac.jp/phys/exp/index.htm にリンクした計算ページを利用して求めればよい。

さらに、表1の測定値を図1にプロットした。図に見られるように、磁束密度はコイル電流に比例することが知られた。また、その比例係数はコイルからの距離 R が小さい方が大きくなっている。図の直線は磁束密度の測定値に対して最少自乗法を適用して求めたものである。

>手順:最小二乗法については、 http://nkiso.u-tokai.ac.jp/phys/exp/index.htm にリンクした計算ページを利用して求める。

図1. コイル電流と磁束密度の関係
 ●はコイルからの距離 R R = 10.00 cm の場合の磁束密度の測定値。○は同じ R での教科書p.159の(10)式にもとづく計算値。■および□は R =20.00cmの場合。実線の直線はそれぞれ測定値に最小二乗法を適用してもとめたもの。直線の勾配は、 R =10.00cm の場合で_________。 R =20.00cm の場合では__________であった。

2. 磁場の強さの空間分布

 表2に磁束密度の空間分布の測定値を示す。なお、コイル電流 I は2.00Aの場合について行った。

位置 R / cm 起電力 V / mV 磁束密度計測値 B / 10-4T 磁束密度計算値 B / 10-4T
2.50 □□.□□ □□.□□ □□.□□
5.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
7.50 □□.□□ □□.□□ □□.□□
10.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
15.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
20.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
25.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
30.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
35.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□
40.00 □□.□□ □□.□□ □□.□□

表2. 磁束密度の空間分布(I = 2.00Aの場合)

磁束密度の空間分布を明らかにするために、位置と磁束密度の測定値の両対数プロットを図2に示す。

図2.コイルからの距離 R と磁束密度 B の両対数プロット
 I = 2.00 Aの場合での磁束密度の空間分布。●は測定値で、○は教科書p.159の(10)式にもとづく計算値である。実線の直線は測定値に最小二乗法を適用して求めたもので、勾配の値は -□.□□ と求められた。

図に見られるように、測定した範囲では両対数プロットが直線に近いので、BR を概ねべき乗の関係として近似できる。さらに、測定値に最小二乗法を適用して求めた勾配の値 -□.□□±□.□□ を用いると、BR の間には次の関係が成り立っていることが見出された。

B R -□.□□±□.□□ 

§5 考察

 図1に見られるように、磁場の強さはコイル電流に比例するが、測定値を外挿するとコイル電流0のときに磁場の強さが正確に0にはなっていない。これには外部からの磁場の影響、サーチコイルでの誘導電流による磁場の打ち消しなどの効果が働いているかもしれない。

 図2の磁場の空間分布に関しては、両対数プロットを直線で近似したが、細かく見るとやや上に凸の関数になっており、B R の関係は単純なべき乗則からは外れている可能性がある。実際に、ビオ・サバールの法則から具体的にコイル電流の作る磁場の計算を行うと,B R に関して比較的複雑な関係になっている。

§6 結論

磁束密度 B は電流の大きさ I に比例し、この比例係数はコイルからの距離が小さくなるほど増加することが確かめられた。
さらに、磁束密度 B はコイルからの距離 R

B R -□.□□±□.□□     ただし I =2.00A,  2.50cm≦R ≦10.00cm

という関係で表わされることが見出された。