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かたちの世界

相似 


 

現実の形で合同なものは非常にまれである。

ところで我々が物を見るとき、遠くから見たり、近くで見たりすると大きさが変わって見えてしまう。にもかかわらず、同じ物はおなじ物として認識することができる。

これは、なぜであろうか?

この理由のひとつとして、我々は「物の形」に着目していて、 そのものが変わらないから大小の見え方の違いによらず同一として認識するのだ、ということが考えられる。下にある図は、上記の文章で書いていることを図化したものである。

  合同の概念を拡張して、一様に拡大・縮小するという変換を導入する。2つの図形のうち、一つを一様に拡大・縮小したものが、他方と合同であるとき、2つの図形は相似である (similar)という。

 「相似」は次のように定義することができる。

n次元ユークリッド空間Aⁿの2つの図形FとF′に対して次の条件を満たす写像f(F)=F′と、正数aが存在するとき、FとF′は「相似」である。

下の図のことをここで説明すると、Fの任意の2点p,qに対してf(p),f(q)間の距離がpq間の距離のa倍である。このような写像を相似変換と呼ぶ。

そして、正数aを相似比(magnification,growth factor)と呼ぶ。これは拡大率・縮小率に相当する。

さらに、n次元ユークリッド空間Aⁿの中に1つの原点Oを考えて、Fの任意の点pに対してf(p)とO間の距離がpとO間の距離のa倍であるとする。このときFとF′相似でありO相似の中心と呼ぶ

FとF′の相似比がaであるとき、FとF′の面積比はであり、FとF′の体積比はである。

  これは次のようにして理解することができる。 下記の図と以下の文章とを見合わせて欲しい。


Fを辺の長さがLの正方形の面で覆い尽くすことにする。Fの形の複雑さなどに応じてLの大きさを適当なものに調節する。全部でk個の正方形でFの表面が覆われたとする。kはLの大きさに依存するのでk(L)と書くことにする。

するとFの表面積Sは



と書ける。

F′の方では、Fを覆っていた正方形がちょうど辺の長さaLの正方形に変換されている。従って、F′は辺の長さがaLの正方形k(L)個で覆われることになる。

するとF′の表面積S′

となる。

従って、FとF′の面積比である。同様にして、Fを辺の長さがLの立方体n(L)個で構成しなおすことができたとする。
すると、Fの体積Vは

と書ける。

F′は辺の長さがaLの立方体n(L)個で構成しなおせることになるので、その体積V′

となる。

このような「相似」という概念は以下のようなことで発見された。


紙の寸法規格は、様々なサイズの紙が相似になるようにできている。紙を長辺で二等分することを繰り返して得られる長方形は、どれも互いに相似である。そうなるために長辺と短辺の長さの比が

になっている。

これは次のようにして示される。

長辺(縦)と短辺(横)の長さをyとxとする。元の紙の縦横比は、長辺を二等分した紙の縦横比に等しくなら ねばならないので、次の関係式が成り立つ。


従って

得られる。

この規格は、ドイツにおいて、物理化学・無機化学及び化学教育に関する広範な業績があり1909年にノーベル化学賞を受けた化学者オストワルド(Friedrich Wilhelm Ostwald 1853-1932)の提案により定められた。 この提唱は、幅と長さの比の長方形は調和の取れた形であり、二等分の法則、相似の法則が生まれ、紙を無駄なく使うことができるようになった。上の図と合わせてみると何を書いてあるかが分かると思われる。

日本の紙の寸法規格が制定されたのは、1929年であり、A版はドイツの紙の寸法規格を採用したもの。