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自己相似 

実際の物体の形を比較するとき、互いに相似の関係であるものは稀である。しかし、一見複雑に見える物体の形を特徴付けるときに、自己相似の概念が役立つことがしばしばある。

自己相似とは、物体の細部の形を拡大してみると、大きなスケールで見たその物体の形と一致することを意味する。

自己相似な図形は大きく2つに分けられる(詳しくは自己相似性の節参照)。

第1は、一定の形を一定の比率で大きくしながらもとの形に付加していく成長の結果できてくるものである。例えば巻貝は、一端だけから、全ての方向に一定の比率で拡大した殻の部分を付加しながら成長する。この結果 、貝殻全体は円錐らせんの形態になる(詳しくは立体らせんの節参照)。

円錐らせんを真上から見た図形等角らせんと呼ぶ。

このような図形では、成長によって増加した各々の部分(自己相似性の「ノーモン」参照)を比較すると相似になっている。等角らせんは 、自己相似な成長をする形の包絡線・補助線になっている。等角らせんは、どの点をとっても滑らかで接線が引ける。しかし次に述べるようなフラクタル図形では、どこを取っても接線が引けないという特徴がある

等角らせん

第2に、図形のどの部分をとっても、その部分を拡大すると全体と同じ形になるものがある。つまり、図形が一様に自己相似性を持つのである。これはフラクタル(fractal)と呼ばれる。以下、フラクタルについて述べる。

下図は、数学者コッホが考えたコッホ曲線と呼ばれるものを作るプロセスを示したものである。 (a) 長さ1の線分を用意する。 (b) 線分を3等分して、中央の線分長さ1/3の正三角形の他の2辺で置き換える。 (c) (b)の操作を、長さ1/3の各線分について行う。

以下、同じ操作を3回、4回と繰り返したのが(d)、(e)である。これを無限に繰り返した極限コッホ曲線と呼ぶ。有限回繰り返した時点では図形は折れ線でできているが、操作を繰り返すたびに直進部分は1/3になる。無限回繰り返すと、図形は至るところ折れ目の曲線になる。そして、この図形の1/4の部分を3倍に拡大すると元の図形と合同な図形が現れる。つまり、部分と全体とが相似である。このような性質を自己相似性と呼ぶ。

コッホ曲線を作成する過程

図形(e)は(d)を1/r=1/3に縮小したものをN=4個つなげたものと合同である。即ち尺度を1/r倍したとき全長がN/r倍になっている。図形全体が、その図形を縮小率1/rで縮小したN個の部分から構成される場合、この図形のフラクタル次元Df を次のように定義する。

これを書き換えると次の関係式が得られる。

コッホ曲線のフラクタル次元Df

となり、1次元よりは大きく、2次元よりは小さい。このフラクタル次元は、「いれもの」としての空間の次元というよりは、コッホ曲線が曲線でありながら1次元をはみ出て、2次元に踏み出すような形態であることを意味する。コッホ曲線は2次元平面を均一に充填することはないが、1次元からははみ出しているのである。

上の次元の求め方に従って、線分、正方形、立方体の次元を求めると次のようになる。線分を1/rに縮小したものは、N=r倍すると合同になる。即ち次元Df は次のようになる。

正方形を1/rに縮小したものは、N=r2倍すると合同になる。従って次元Df は次のようになる。

同様に立方体を1/rに縮小したものは、N=r3倍すると合同になる。従って次元Df は次のようになる。

コッホ曲線は理想的な自己相似図形である。一方、自己相似性を統計的に成り立つところまで拡張して考えると、複雑な形を持つ自然物の多くが自己相似性によって特徴付けられることが分かってきた。

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